この記事の内容
よく見かける「標準報酬月額」について解説!
「どんなものか」や「調べ方」などが分かる🙌
年金や傷病手当金など、公的な制度について調べている時によく見かけるのが「標準報酬月額」という言葉。
でもそもそもこの標準報酬月額が一体何なのかがよく分からないと計算が出来ませんよね。
シミュレーションしようにもこの標準報酬月額がよく分からなくて先へ進めません…。
そこでこの記事では、標準報酬月額とは何かを手取り15万円の私の例を出しながら、分かりやすく解説していきます。
この記事を読むことで標準報酬月額とはどんなものかが分かり、各種制度を使った時のリアルな金額が計算しやすくなりますよ。
細かい部分は各健康保険組合によって異なりますが、私は協会けんぽに加入しているOLのため、記事の内容は協会けんぽの情報が中心となっています。
Contents
標準報酬月額とは

まず標準報酬月額とは、
保険料の計算を簡単にするために、「4月・5月・6月のお給料の平均額が〇円~〇円までだったら〇円と見なして色々計算するよ」とお給料をグループ分けしたもの
のことです。
例えば「4月・5月・6月のお給料の平均額が20万円~22万円の人は、保険料の計算上は21万円のお給料として社会保険料を計算するよ」といった感じですね。
4月・5月・6月のお給料の平均額が23万円~25万円なら24万円として見なす、25万円~27万円なら26万円として見なす…というように、お給料の区分が細かくグループに分かれています。
1か月のお給料を「報酬月額」と呼びます。それに対して保険料の計算の基準として利用するので「標準報酬月額」と呼ばれているイメージです。
この「標準報酬月額」は以下のようなものの計算に利用されています。
標準報酬月額の使い道1:保険料の計算
会社員の私たちは毎月お給料から「健康保険料」「厚生年金保険料」「介護保険料」(※介護保険料は40歳から)が天引きされていますよね。
あの天引きされている金額の計算には標準報酬月額が使われています。
標準報酬月額の使い道2:手当金の計算
私たちが納めている保険料だけでなく、私たちが仕事を休んだ時に社会保険からもらえる「お給料の補填」的なモノについても標準報酬月額が使われています。
例えば
- 出産手当金(会社員が産休を取得した時にもらえる給料の補填的な手当金)
- 傷病手当金(プライベートでケガや病気をして仕事を休んだ時にもらえる給料の補填的な手当金)
- 休業手当金(仕事中のケガや病気によって仕事を休んだ時にもらえる給料の補填的な手当金)
の計算には標準報酬月額が使われています。
標準報酬月額の使い道3:年金の計算
標準報酬月額は年金の計算にも利用されます。
- 老齢厚生年金(老後の年金)
- 障害厚生年金(障害を負ってしまった時の年金)
- 遺族厚生年金(会社員の大黒柱が亡くなってしまった時の遺族の生活補償の年金)
年金には要件を満たせば会社員・自営業者に関係なくもらえる基礎的な部分の「基礎年金」と、会社員がもらえる「厚生年金」があります。
これらのうち、会社員がもらえる部分の「厚生年金」の計算には標準報酬月額が使われます。
手当金や年金はあまり馴染みがないですが、毎月天引きされている保険料にも使われていると思うと標準報酬月額って意外と身近ですね。
なぜ標準報酬月額を使うのか
なぜこんな「標準報酬月額」というモノを使って保険料の計算をしているのかというと、保険料の計算を簡単にするためです。
例えば私たちが毎月天引きされている社会保険料ですが、この保険料の計算を毎月の給料をもとに計算していたら大変ですよね。
もらうお給料は毎月変動するからその都度計算しなきゃいけないし、1円単位まで出るから細かいし、従業員全員分を計算しなきゃいけいないし、それらを給料日までの短期間ですべて計算しなきゃいけない…。
実際のお給料で厳密に計算していると細かいし、多いし、期間も短いしで大変なわけです。
なので毎月お給料から天引きされる社会保険料は「標準報酬月額」をもとにしてお給料を計算するという仕組みになっています。
手当金や年金も同様で、計算を簡易化するために標準報酬月額を使っています。
また、これらを裏返すと標準報酬月額が上がると支払う保険料が多くなるとも取れますが、その分これらの年金や制度を利用する時に、受け取れる金額も多くなるという意味にもなります。
「標準報酬月額が高くなる=損」とも言い切れないのが標準報酬月額のポイントですね。
標準報酬月額が決まるタイミング

標準報酬月額は決まるタイミングがいくつかあります。
- 7月に毎年4月・5月・6月のお給料を平均する
- お給料に大幅な増減があった時に見直す
- 育児休業から復帰した時に見直す
基本的には毎年7月に行われるもの(定時決定と言います)で決まりますが、お給料に大幅な増減があった時や、育休から復帰した時にも見直されます。
定時決定(毎年4月〜6月)
標準報酬月額は基本的に毎年4月から6月の3か月間のお給料を平均して決まります。
これを「定時決定」と呼んでいます。
通常はこの「定時決定」で標準報酬月額が決まります。
随時改定
4月から6月に関係なく、お給料に大きな変更があった場合にも標準報酬月額が見直されます。
このタイミングを「随時改定」と呼んでいます。
「お給料に大きな変更があった場合」とは、具体的には
連続した3か月間のお給料の平均額が、標準報酬月額の表に当てはめて、2等級以上差が出る時
と定義されています。
昇給や役職についた時、パートから正社員になった時などにお給料が大きく変動して、随時改定の対象になることがあります。
育児休業等終了時改定
育児休業などから復帰した際にも、標準報酬月額が見直されます。
例えば育児休業明けでは、具体的には
育児休業が終わってから3か月間のお給料の平均額が、標準報酬月額の表に当てはめて、育児休業前と1等級以上の差が出る時
に、標準報酬月額が見直されます。
育児休業明けは時短で勤務する方も多いですよね。時短で勤務すると育児休業前よりお給料が下がって、標準報酬月額も下がる可能性があります。
標準報酬月額の対象となるもの・対象外のもの

お給料でもらった金額のうち、標準報酬月額の対象となるのは総支給額です。
手取りではありません。
さらに言えば、以下のような「労働に対するお給料」が標準報酬月額の対象になります。
標準報酬月額の対象の例
- 基本給
- 役職手当
- 勤務地手当
- 家族手当
- 通勤手当
- 住宅手当
- 残業手当
現金支給でなくても、現物で支給されている「通勤のための定期券」「回数券」なども、標準報酬月額の対象になります。
そしてお給料の中でも、以下のような項目は標準報酬月額の対象外です。
標準報酬月額の対象外の例
- 見舞金
- 慶弔金
- 年金
- 出張手当
- 傷病手当金
- 労災保険の休業補償給付
イメージとしては、労働に対する報酬が標準報酬月額の対象になる感じですね。
標準報酬月額の調べ方

これまで標準報酬月額について見てきましたが、自分の標準報酬月額がいくらか気になりますよね。
ここからは標準報酬月額の調べ方を3つ紹介します。
1.ねんきん定期便の標準報酬月額欄で確認
ねんきん定期便は会社員や国保に加入している方などに、毎年送られてくる書類。
基本的には誕生月に送られてきます。(1日生まれの方は誕生月の前日です。)
この年金定期便には標準報酬月額の欄があるため、ここをチェックすれば、自分の標準報酬月額がすぐに分かります。
2.4月から6月のお給料の平均額を、標準報酬月額の表に当てはめる
4月から6月の給与明細が手元にあれば、自分で計算して調べることができます。
手順は以下のとおり。
- 4月から6月のお給料の平均額を計算
- 健康保険(組合)の標準報酬月額表を用意
- ➁で用意した標準報酬月額表に、➀で計算したお給料の平均額を当てはめて調べる
例えばお給料が
- 4月:21万円
- 5月:19万円
- 6月:20万円
だとしたら、3か月のお給料の平均額は20万円になります。
次に、加入している健康保険(組合)の標準報酬月額表を検索して調べます。
私が加入している全国保険協会(協会けんぽ)では、都道府県によって標準報酬月額表が異なります。住んでいる地域の標準報酬月額表を用意しましょう。
健康保険組合の場合は自分が勤めている健康保険組合の標準報酬月額表を用意します。
標準報酬月額表を用意したら、➀で割り出した自分のお給料の平均額を当てはめましょう。
例えば、標準報酬月額表に当てはめると以下のようになります。
標準報酬月額表に、3か月のお給料の平均額を当てはめてみました。出展:標準報酬月額表(協会けんぽ)
4月~6月のお給料の平均額が20万円の場合、「報酬月額」が20万円に該当する行に当てはめると、
- 標準報酬月額:20万円
- 健康保険等級:17等級
- 厚生年金保険等級:14等級
- 健康保険料:19,580円(労使折半なので自己負担は9,790円)
※私は40歳未満なので「介護保険第2号被保険者に該当しない場合」にあたります。 - 厚生年金保険料:36,600円(労使折半なので自己負担は18,300円)
となります。
3.給与明細の健康保険料・厚生年金保険料から割り出す
「4月から6月の給与明細が全て揃わないけど、それ以外の月の給与明細を持っている」という場合は、給与明細に記載された健康保険料・厚生年金保険料から、標準報酬月額の表を使って割り出すことも出来ます。
手順は以下のとおり。
- 健康保険(組合)の標準報酬月額表を用意
- 給与明細に記載された健康保険料・厚生年金保険料が記載されている行を、標準報酬月額表から探す
まず、加入している健康保険(組合)の標準報酬月額表を用意します。
そして給与明細に記載された健康保険料と厚生年金保険料が記載されている行を、標準報酬月額表で探します。
例えば給与明細の健康保険料が9,790円、厚生年金保険料が18,300円と記載されていたとしましょう。
標準報酬月額表でこの金額を調べると、以下のようになります。
標準報酬月額表から、健康保険料が9,790円、厚生年金保険料が18,300円の行を探します。出展:標準報酬月額表(協会けんぽ)
この場合は
- 標準報酬月額:20万円
- 健康保険等級:17等級
- 厚生年金保険等級:14等級
- 健康保険料:19,580円(労使折半なので自己負担は9,790円)
※私は40歳未満なので「介護保険第2号被保険者に該当しない場合」にあたります。 - 厚生年金保険料:36,600円(労使折半なので自己負担は18,300円)
となります。
標準報酬月額表は毎年異なります。標準報酬月額表を使って調べる場合は、手元にある給与明細と、標準報酬月額表の年が同じであることを確認してくださいね。
まとめ:標準報酬月額が分かればシュミレーションがしやすくなる

お金のシミュレーションをしておくのは大切なこと。
その際に、標準報酬月額は欠かせません。
標準報酬月額が分かれば、
- 育児休業中にもらえるお金
- 将来もらえる年金額
などを計算できるようになり、より具体的に、お金のシミュレーションがしやすくなりますよ。
普段はあまり意識しませんが、いざという時にもらえる給付金では、標準報酬月額が関係してくることも多いです。ぜひ自分の標準報酬月額を把握しておきましょう✨
以上、「標準報酬月額とは?調べ方は?手取り15万円のOLの例を見ながら分かりやすく解説します。」の内容でした。