この記事の内容
傷病手当金とはどんな制度かを解説!
仕事に関係のない病気やケガが原因で休んだ時も、条件を満たせば「傷病手当金」の休業給付を受けられる🙌
万が一の時のために、どんなものかを知っておこう☺
病気やケガで仕事を休んだ時には、有給休暇を取得しなければいけないと思いがち。
でも長期間に渡って仕事を休むと、有給休暇をすべて消化してしまったり、休職中の収入がゼロになるのではないかという不安がありますよね。
ですがサラリーマンやOLなどの会社員は、傷病手当金の制度を利用すると、
休職中でも毎月お金が入ってくる
んです。
働いている時より収入は少なくなるものの、療養中でも毎月お金が入ってくるのはやはりありがたいもの。
そこでこの記事では、
傷病手当金とはどんな制度か?
を、私のお給料の例を見ながら解説していきます。
病気やケガはしないに越したことはありませんが、予期せず自分の身に降りかかるかもしれません。万が一長期間休職することになってしまっても慌てないよう、制度について知っておきましょう!
細かい部分は各健康保険組合によって異なりますが、私は協会けんぽに加入しているOLのため、記事の内容は協会けんぽの情報が中心となっています。
Contents
傷病手当金とは?わかりやすく言うと「業務以外の病気やケガで休んだ時に使える制度」
働いている方が活用できる制度として、労災と同様に知られているのが「傷病手当金」。
傷病手当金の内容についてザックリ説明すると、
- 労災以外の病気や怪我で就業が困難になった場合に利用できる
- 上記の期間の生活を保障するために、保険者から決められた支給額を給付してもらうことができる
といった感じ。
労災以外の病気や怪我が対象なので、ザックリと言えば、業務中や通勤中に起きた病気やケガ以外。
例えば
- 持病が悪化して休んだ
- 休日に遊びに出掛けたらケガをして休んだ
- 妊娠中の経過を見て休んだ
- インフルエンザで休んだ
といったときにも、条件さえ満たせば、傷病手当金を受け取ることが出来ます。
仕事が原因じゃなくても、休んだ時に補償されるなんて意外…!!
名前に「傷病」とついていますが、妊娠中でも、切迫流産や切迫早産などのときには傷病手当金が支給されます。
インフルエンザで欠勤した時でも、条件を満たせば傷病手当を使えます。
仕事を休んだ時には有給休暇を使わないといけないと思いがちですが、条件を満たせば傷病手当金の制度も使えるということを、頭の片隅に入れておきたいですね。
傷病手当金を受給するための条件

傷病手当金は、以下の4つの条件を満たしたときに受給することができます。
① 健康保険の被保険者が、業務(労災)以外の理由によるケガや病気で休業することになった
② 就労が困難である
③ 4日以上就業できない日があった(連続した3日間を含む)
④ 休業した期間に給与の支払いがない
就労困難かどうかは、仕事内容や療養担当者の意見を参考に判断されます。
また、①~③の条件をクリアしていても、給与が支払われている間(有給休暇も含む)は傷病手当金が支給されません。
待期期間は傷病手当金が支給されない
連続して仕事を休んだ最初の3日間は「待期期間」と呼ばれ、傷病手当金が支給されません。
そしてこの待期期間を過ぎた4日目から、傷病手当金の支給が開始されます。
この「最初の3日間」には有給休暇や土日祝日なども含まれます。
例:土日を挟んだ場合
金曜日から休んだ場合、翌週の月曜日が4日目となり、以降の期間が支給対象日として計算される
例:有給休暇を挟んだ場合
火曜日と水曜日は公休、木曜日は有給休暇の場合、金曜日が4日目となり、以降の期間が支給対象日として計算される
また、就労時間中に業務以外のケガや病気が発生した場合には、ケガや病気をした当日を待期の初日として起算できます。
傷病手当金の支給
傷病手当金の支給額の計算方法

傷病手当金の支給額は、各月の「標準報酬月額」を基準とし、以下の計算をもとに手当金が支給されます。
1日あたりの支給金額
支給開始日以前から12ヶ月間の標準報酬月額の平均額 ÷ 30日 × 3分の2
支給金額
1日あたりの支給金額 × 支給対象期間の範囲で勤務していない支給期間
「標準報酬月額」の詳細については以下の協会けんぽのサイトを参考にどうぞ。
関連リンク
標準報酬月額:協会けんぽ
例えば私(標準報酬月額20万円)が33日間連続で休み、そのうち30日間、傷病手当金を支給されるとしたら、以下のようになります。
33日間連続で休み。 支給対象日数が30日間。 | ||
---|---|---|
標準報酬月額の平均額 | 20万円 | |
➀1日あたりの支給額 | 20万円 ÷ 30日 × 3分の2 ≒ 4,444円※ | |
②総支給額 | 4,444円 × 30日 = 133,320円 | |
※上記の計算式では、ややこしくなるので四捨五入はせずに計算しています。厳密には➀で20万÷30日分で出た数値の10円未満を四捨五入、ここからさらに3分の2を乗じた数値の1円未満を四捨五入します。そのため、上記の計算では1日当たりの支給額は、厳密には4,446円になります。 |
ちなみにですが、ここからさらに一部の保険料が引かれます。
なのでこの金額をまるまるもらえるわけではありません。
保険料については、「傷病手当金を受給中でも社会保険料、住民税の支払いは発生する」で後述しています。
傷病手当金の支給期間

傷病手当金の支給期間は、支給が開始された日から最長で1年6か月となっています。
ただし、傷病手当金の支給期間の考え方にはちょっとクセがあるので要注意。
この支給期間は「1年6か月分が支払いされる」というわけではなく、「支給開始から1年6か月が最長の支給期間」となっています。
例えば傷病手当金の支給が開始されてから仕事に復帰した場合、仕事に復帰した期間中も1年6か月のカウントは進みます。
そしてもし仕事に復帰してから同じ病気やケガで仕事が出来なくなった(再発した)場合でも、支給開始から1年6か月の期間を超えてしまっている場合には、傷病手当金が支給されません。
傷病手当金の支給期間は傷病ごとに最大1年6か月になります。
異なる傷病の場合には、それぞれの傷病で、最大1年6か月の支給期間があります。

傷病手当金は、以下の要件を満たせば退職しても給付を受けることができます。
資格喪失の日の前日まで被保険者期間が継続して1年以上ある
被保険者資格喪失の前日に傷病手当金を受けている、もしくは受けられる条件を満たしている
この条件を満たしている場合、資格喪失後も継続して傷病手当金を受けることができます。
傷病手当金の支給日はいつ?

傷病手当金の支給日は健康保険組合によって異なります。
例えば「東京都情報サービス産業健康保険組合(TJK)」では、毎月10日・20日・末日のいずれかと決まっており、公式ホームページのPDFに明記されています。
関連リンク
病気やケガで仕事を休み、給与が得られないとき(傷病手当金)(東京都情報サービス産業健康保険組合(TJK))
ただ、私が加入している全国健康保険協会(協会けんぽ)では、支給日に関する記載は特にありませんでした。
また、申請が初回か2回目以降かでも、支給日は異なってきます。
初回の申請では審査があるため、少し時間がかかります。
審査が通ると支払決定通知書というハガキが届きます。このハガキに支給日が記載されていますので、チェックしてみましょう。
参考までに、私の加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)の支払決定通知書のはがきは以下のようなフォーマットになっています。
全国健康保険協会(協会けんぽ)の支払決定通知書のはがきのイメージ。支給金額や振り込み金額が分かるようになっています。出展:全国健康保険協会(協会けんぽ)
公式ホームページや問い合わせをしても、支給日がハッキリ分からない場合は、支払決定通知書を確認するのが良さそうですね。
傷病手当金の申請手続き

傷病手当金を申請するには「健康保険傷病手当金支給申請書」を記入し、必要な添付書類と一緒に該当の協会けんぽに提出します。
ケガや病気をした理由によっては、本人確認書類以外の書類も提出する必要があります。
関連リンク
健康保険傷病手当金支給申請書:全国健康保険協会
傷病手当金を利用する時の注意点
傷病手当金を受給中でも社会保険料、住民税の支払いは発生する

傷病手当金を受給中でも、一部の保険料は発生し続けます。
傷病手当金を受給中でも、支払いが発生する保険料は以下のとおり。
- 健康保険:従前通り支払い
- 厚生年金:従前通り支払い
- 雇用保険:1日でも働けば給与に応じて支払い
- 所得税:支払いなし
- 住民税:従前通り支払い
健康保険と厚生年金は、休職する前と同じ金額の支払いが発生します。
また、住民税は前年の収入に対してかかってくるものなので、こちらも従前通り、支払いが発生します。
雇用保険は働いて得たお給料から引かれるものなので、働いた日が1日でもあると、そのお給料に対して支払いが発生します。(まったく働かなかった月は、雇用保険は発生しません。)
所得税は傷病手当金自体が非課税所得のため、かかってきません。
なお、傷病手当金を受給中でも、社会保険料は休職前と同様、会社と折半されます。
例えば手取り15万円の私の数値でシミュレーションすると、1か月まるまる休職すると、手元に残るのは約97,020円となります。
シミュレーション
- 標準報酬月額:20万円
- 支給対象日数:30日間(まる1か月間、連続で休職)
- 健康保険:9,900円
- 厚生年金:18,300円
- 住民税:8,100円
上記の例でシミュレーションすると… | ||
---|---|---|
標準報酬月額の平均額 | 20万円 | |
➀1日あたりの支給額 | 20万円 ÷ 30日 × 3分の2 ≒ 4,444円※ | |
②総支給額 | 4,444円 × 30日 = 133,320円 | |
③手取り | 133,320円 ー 9,900円 ー 18,300円 ー 8,100円 = 97,020円 | |
※上記の計算式では、ややこしくなるので四捨五入はせずに計算しています。厳密には➀で20万÷30日分で出た数値の10円未満を四捨五入、ここからさらに3分の2を乗じた数値の1円未満を四捨五入します。そのため、上記の計算では1日当たりの支給額は、厳密には4,446円になります。 |
健康保険、厚生年金、住民税だけで、36,300円も引かれています。
もともと支給される金額が133,320円なので、最終的に残る金額も、10万円を切ってしまいます。
収入が少なくなって痛手なのに、さらに保険料も徴収されると…手取りはかなり少なくなりますね…。
傷病手当金と他の制度との併用に要注意

他の制度を利用しているとき、傷病手当金は支給額が調整されたり、支給を停止されることがあるので注意が必要です。
こんな制度を利用するときは気を付けたい!
- 出産手当金
- 老齢年金
- 障害厚生年金・障害手当金
- 労災保険
これらの制度と傷病手当金を利用する場合には、それぞれの受給条件などをよく確認しておきましょう。
まとめ:会社員は傷病手当金の制度があることだけでも知っておこう!

ちょっとした風邪やケガで仕事を休むときには、有給休暇で対応できることが多いです。
ですが長期間に渡って休むことになると、有給休暇が足りなかったり、収入面での不安が大きかったりしますよね。
万が一病気やケガで、仕事を4日間以上休まなければいけなくなった時には、傷病手当金の制度を利用することも検討してみましょう。
以上、「傷病手当金とは?どんな制度?手取り15万円の会社員OLの例を見ながら分かりやすく解説!」の内容でした。